なぜカラーの残留除去が省かれてしまうのか
美容室でヘアカラーをした後、仕上げのシャンプーをして乾かして終了――。
おそらく多くの方がこの流れに慣れているのではないでしょうか。
しかし実はその時点で、髪の中や頭皮には**カラー剤やアルカリ、酸化剤などの「残留物」**が残っています。
これらを取り除く「残留除去」という工程が本来は必要なのですが、現状では多くのサロンで省かれているのが実情です。
美容師自身も「残留は髪や頭皮に悪影響を及ぼす」と知っているのに、なぜ未だに省かれてしまうのでしょうか。
今回はその背景と、本当はどれほど大切な工程なのかについて、少し掘り下げてお伝えしていきます。
カラー後に残る「見えないリスク」
まず、ヘアカラーでどんな残留物が残るのかを整理してみましょう。
アルカリ剤:髪のキューティクルを開き、染料を内部に入れるために必要ですが、残ると髪のタンパク質を変性させ、パサつきや切れ毛の原因に。
過酸化水素(酸化剤):染料を発色させるために使いますが、余った分は髪内部で酸化反応を続け、数日〜数週間かけてじわじわとダメージを進行させます。
酸化染料の残留:髪の奥にとどまり、後のパーマや縮毛矯正と反応してチリつきを引き起こすことも。
つまり、残留物は「その場で髪を傷ませる」のではなく、時間をかけてじわじわと悪影響を及ぼす見えないリスクなのです。
それでも残留除去が省かれてしまう理由
ここで大きな疑問が生まれます。
「多くの美容師は残留の悪影響を知っているのに、なぜ残留除去をしないのか?」
その理由はいくつか考えられます。
1. コストと手間がかかる
残留除去には専用の薬剤や処理剤を使用します。それらは当然サロンのコストになりますし、施術時間も延びます。
今は格安サロンが増え、低価格・スピード勝負の競争が激化しているため、「見えにくいケア」ほど真っ先に省略されてしまう傾向があります。
2. お客様に伝わりにくい
残留除去はやっても見た目にはあまり変化が出ません。
一方で同じくらいの時間とコストをかけるトリートメントなら、手触りやツヤ感の変化がすぐに分かります。
そのためお客様も「トリートメントの方が良い」と感じてしまいやすく、サロンも勧めやすいのです。
3. サロン側の提案しやすさ
美容師としてはトリートメントの様に「効果が分かりやすいもの」を提案した方がお客様に納得していただけます。
残留除去のように「内部的には確実に意味があるけれど見た目に出にくいケア」は、効果がわかりにくい為、提案するのも難しいのが現実なんです。
4. 効率やデザイン優先のサロンでも省かれることがある
ここで注意してほしいのは、格安サロンだけでなく、一定以上の価格帯のサロンでも残留除去が省かれているケースがあるという点です。
理由は「効率」と「デザイン重視」。
施術の回転を早めるために、あえて残留除去を省く
ヘアカラーの仕上がりやデザイン性を優先し、「見えにくいケア」にまで手を回さない
つまり価格が高い=必ずしも残留除去をしている、とは限らないのです。
トリートメントよりも大切なもの
ここで押さえておきたいのは、髪は一度ダメージを受けると二度と元には戻らないという事実です。
トリートメントをすれば手触りは良くなり、見た目もきれいに整います。しかしその効果は一時的で、シャンプーのたびに流れ落ちていきます。
さらに残留物を取り除かないままトリートメントをすると、ダメージの原因となる残留物を髪の中に閉じ込めてしまうことにもつながります。
つまり「一見きれいに見えるけれど、内部ではダメージが進行している」という状態をつくり出してしまうのです。
一方で、残留除去をきちんとしておけば髪内部での酸化反応を抑えられます。その上でトリートメントを行えば、より効果的に働きます。
残留除去を省くことによる長期的なデメリット
残留物を放置すると、長期的に髪や頭皮にさまざまな悪影響を及ぼします。
ダメージの蓄積:枝毛や切れ毛、パサつきが慢性化
色持ちの悪化:せっかくのカラーがすぐに褪色
パーマ・縮毛矯正への悪影響:かかりが悪い、不均等、失敗リスクの増加
頭皮トラブル:炎症やかゆみ、さらには薄毛や白髪の原因に
これらは一度出てしまうと改善が難しく、「なぜか髪が弱くなってきた」「以前より色もちが悪い」といった形でじわじわ現れてきます。
本当に髪を守るために必要なこと
結論として、**残留除去は「見えにくいけれど最も大切なケア」**だということです。
残留除去は確かにお客様には分かりにくい
サロン側にとってはコストも手間もかかるため、省略されがち
格安サロンだけでなく、効率やデザイン重視のサロンでも省かれることがある
しかし省けば長期的に確実に髪と頭皮を傷める
見た目を一時的に整えるトリートメントよりも、まずは「残留除去」で髪と頭皮を守ることこそが本質的なケアです。
美容室に行く際には、**「このサロンはカラー後に残留除去をしてくれるのか?」**という視点をぜひ持ってみてください。
価格や仕上がりだけでは分からない、本当に大切な違いがそこにあります。
まとめ
・カラー後には髪や頭皮に残留物が残り、それが長期的なダメージの原因になる
・残留除去はコスト・手間・効果の見えにくさから省かれやすい
・格安サロンだけでなく、効率やデザインを重視する価格帯のサロンでも省かれることがあるので注意
・トリートメントよりもまず残留除去が大切
・長期的に美しい髪を守るためには「見えにくいケア」にこそ目を向ける必要がある
「その場の仕上がり」だけでなく「数年後の髪や頭皮の健康」を見据えたとき、残留除去の有無が大きな分かれ道となります。
美しい髪を長く楽しむために、ぜひ覚えておいてください。
0コメント