髪質改善トリートメントって傷むんですか?
以前、初めてご来店されたお客様とのやり取り
「前に他のお店で髪質改善トリートメントを何回かやっていたんですけど・・・
最初は良かったんですけどなんか最近すごく傷んだ感じがするんですよね。」
「最近そういうのよくありますねー。」
「髪質改善トリートメントって傷むんですか?」
「はい、やり方次第で傷む可能性は十分あります。」
「トリートメントなのに?」
「はい、残念ながらトリートメントでも傷むことはあります。」
「そうなんですか!?」
そうです
トリートメントと名前がついていても傷む可能性はあるんです。
とくに髪質改善はトリートメントの中で最もダメージリスクの高いメニューなんです。
トリートメントで傷むことなんてあるの?
実はこういったやり取りは今回が初めてではありません。
だいたい1、2年前からかなり増えています。
1、2年前頃と言えばちょうど髪質改善というワードが美容の検索ランキングで1位になった頃。
以前予想していた通り
流行る → 一般化する → 価格競争 → コストカット → トラブル増加
といういつもの流れになってしまっているようですね。
(最近流行りのメテオトリートメントもかなり低価格してきているのでこれから要注意です。)
当店のブログを読んでいただいているお客様は大丈夫だと思いますが、どうしても世間的には髪質改善という名前だけで「なんだかよくわからないけど髪質改善って事は髪に良いんでしょ?」というイメージとして認識されてしまっているようです。
それ以前にそもそもトリートメントという認識が間違っている事が多い。
『トリートメントでも傷む可能性はある』
お家で使うトリートメントならそこまで強くは無いのであまり心配ありませんが
サロントリートメントはある意味強すぎる為ダメージのリスクが出てきてしまう。
間違った使い方をすればドライヤーなんかよりもダメージリスクが高く
髪質改善トリートメントにいたってはやり方次第でカラーやパーマよりも大きな負担になる事だってあるんです。
しかも髪質改善というのはあくまで概念なのでサロンによって中身は様々。
酸熱トリートメントだったり水素トリートメントだったり酸性ストレートだったり微還元トリートメントだったり弱めの縮毛矯正だったりシステムトリートメントだったり・・・
一見同じように見えても中身はサロンによってバラバラ。
そういった意味でもリスクの高いメニューなんです。
そもそもちゃんとした髪質改善をするにはとても技術と知識を要するものなので
よっぽど信用できるサロン以外での施術はおすすめしません。
とにかくまずは最初の認識として
「トリートメントでも傷むことがある」事と
「髪質改善は本来はとても難易度の高い技術」
という事は絶対に覚えておいて下さい。
髪質改善トリートメントの仕組み
現在サロンで行われている様々な髪質改善トリートメントの中で一番主流なのが酸熱トリートメントと言われているもの。
その酸熱トリートメントとは
ダメージを受けて髪のたんぱく質の結合が壊れて少なくなってる状態に、グリオキシル酸などの酸性の成分をつけると、水素(H)を2つ持ってるアミノ基が髪に入っていきます。
そして、そこに熱と加えるとアミノ基同士がイミノ結合(イミン結合)という結合反応でくっつきます。
このイミノ結合(イミン結合)が髪のケラチンに吸着してダメージホールを埋めるのでハリコシが出て髪がしっかりしますし、大きくなり吸着して、しかもツヤサラにするために強い表面被膜をすることでで効果が持続するというもの。
図で書くとこんな感じ↓
そして、高温のストレートアイロンで熱を加えるとそのアミノ基同士が脱水縮合し、イミノ(イミン)結合します。
しかしアミノ基同士がアイロンの熱で脱水縮合してイミノ結合(イミン結合)するのは間違いではないのですが
そのイミノ結合されたものが髪のたんぱく質に結合するわけではないのです。
ですのでどれだけ持続力を高めたとしてもいつかは無くなってしまうので
髪が治るわけではないんです。
ここら辺を勘違いしてしまっている美容師さんも多く
「髪質改善ならアイロンの熱で髪のたんぱく質と結合するので髪が治ります。」
みたいな事を言ってしまいお客様にも勘違いを広めてしまっています。
どんなトリートメントも髪が治る事は無いという事が大前提なんです。
髪質改善の危険性とは
髪質改善における危険性は大きく分けて3つ
1つ目は「高温のアイロン処理」
先程の酸熱トリートメントの様に多くの髪質改善は高温のアイロン処理が必要になります。
そしてアイロンの熱はどうやっても髪の負担になるので少なからずダメージのリスクになるってしまいます。
しかもその温度は主成分によって違いますが大体160℃~200℃とかなり高温です。
しかし、その温度が低すぎると反応もいまいちになってしまいあまり効果を感じられなくなってしまうので、ある意味「諸刃の剣」状態なんです。
ですのでアイロンを使う技術者は温度の管理はもちろん。
アイロンの当て方や時間など、場合によっては縮毛矯正以上の難易度のアイロン技術を要します。
髪質改善は施術する人の技量で毒にも薬にもなるものなのです。
ちなみに以前ブログでも紹介したトステア(アミノエチルチオコハク酸ジアンモンニウム)は、80℃で反応すると言われているので
140℃以下のアイロンでも十分に反応させる事ができる。
そういった意味では熱によるダメージのリスクがとても低い成分なんですよね。
こういった成分の種類を髪の状態によって使い分けできるようにするのも、ちゃんとした髪質改善をするには必要な能力と言えます。
2つ目は「強すぎるコーティング」
ほとんどの髪質改善にはシリコンやシリコンの様に髪の毛の表面をコーティングする成分がかなり沢山含まれています。
そのおかげで髪の表面をきれいにし、つやを出し、手触りを向上させ、まとまり感をアップさせています。
しかしその強すぎるコーティングは場合によってはダメージに繋がってしまう危険性があります。
髪はコーティングされると薬剤が残留しやすくなったり、水分の調節機能が落ち逆に内部は乾燥しやすい状態になってしまいます。
たとえそこまでの効果が無かったとしても、少なくとも次に行うカラーやパーマ、トリートメント等の邪魔をしてしまうのでその際は必ずコーティングをはがす作業から始めなければならなくなります。
そしてなによりも
見た目や手触りは良いのに中身はボロボロという困った状態を作ってしまい本人の自覚がない状態でダメージが進行してしまう可能性があります。
3つ目は「不透明な髪質改善の定義」
なんどもお伝えしていますが髪質改善とはメニューの名前では無く概念です。
ですのでサロンによって全く違ったものになっています。
場合によっては”どれだけダメージの大きい施術をしてもその時髪が綺麗に見えてしまえば全部髪質改善”と言えてしまいます。
そしてこれも以前ブログで書きましたが
どんな状態の髪でも縮毛矯正をかけてしまえば一時的にですが綺麗になります。
しかしどんな縮毛矯正でもダメージが無い事なんてありえないので、確実に髪のダメージは進行します。
髪質改善も同様にただキレイに見せる事を重視した場合、それはトリートメントと言っていてもダメージリスクの高いメニューになっている事が多くあります。
簡単に言ってしまえば、一時的な綺麗を求めるほどその髪質改善はより縮毛矯正に近いメニューになっている事が多いと言えるんです。
たまに「髪質改善トリートメント3回コース」の様なものを見かけるかと思いますが
これも結局は縮毛矯正(の様なもの)を3回に分けてるだけだったりもします。
確かに3回に分ける事で1回毎の負担は少なくなるし、綺麗に見せる効果も長続きしたように感じますが、トータルの負担は縮毛矯正と変わらないし、結局は時間と共にその効果も無くなり状態も悪化していく事になります。
髪質改善は外側からはどんなものかを判断するのは難しいのですが、少なくともそのサロンが何を指して髪質改善と言っているかを出来るだけ事前に調べるようにして
「髪質改善で髪が治ると宣伝しているもの」
「キレイに見せる事重視しでそのリスクを伝えていないもの」
といったものは出来るだけ避けるようにした方がお勧めです。
まとめ
以上をまとめると
・トリートメントでも髪が痛む可能性はある。
・髪質改善は基本的にダメージのリスクが高い。
・髪質改善は概念でありサロンによってその中身はバラバラ。
・ちゃんとした髪質改善をするにはかなりの知識と技術が必要。
・見た目の綺麗さはダメージのリスクと比例する。
・どんなトリートメントでも髪が治る事は無い。
といった感じになります。
元々髪質改善という名称が使われ始めた頃は
「ダメージが進行して扱いにくくなった髪をなんとかしたい」とか
「元々パサつきや広がりのひどい髪質を少しでも良くしたい」とか
「年齢による髪質の悪化をなんとかしたい」というような
多くの方が抱える髪の悩みを従来のトリートメントとは違った切り口でなんとかする為に出来た新しい考え方です。
しかし現在の髪質改善は多くのサロンで一般化して多様化が進んで、カットと同じようにサロンや美容師によってその差は大きく広がっています。
先程の酸熱トリートメントも上手く使えば従来のトリートメントではできないくらい毛髪内部の補修が可能になるとても画期的なものです。
リスクはあるものの上手い使い方をすれば髪質に悩む方にはかなりの恩恵になります。
しかしそのリスクがゼロになる事はあり得ません。
これからはパーマや縮毛矯正などのメニューと同じようにそれ相応のリスクがあると理解した上で、たとえトリートメントだけだとしても、その名前だけで選ぶのではなくしっかりとサロンや人のレベルを見極めなければならない時代になったという事なんでしょうね。
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