韓国ヘアが流行った意外な背景
ちょっと前から流行ってますよね韓国ヘア。
最近のインスタで出てくる写真の多くが韓国系のヘアスタイルです。
しかし、以前ブログでも書きましたがこの韓国ヘアってほぼ全てがアイロンを使ってなんぼのスタイル。
よくスタイリング動画なんかでもでてきますが
ビフォーはこんな感じ 。
そしてスタイリングするとこんな感じ。
スタイリングするだけで全然違いますね。
むしろスタイリングする前のスタイルってなんていうか普通って感じですよね。
こちらも巻く前は決して良いスタイルとは言いにくい
この様に韓国ヘアってアイロンを使って丁寧にスタイリングをして初めて完成するスタイルなんです。
ではなぜ今こういったスタイルが流行るのか。
それは韓国の美容室事情
ひいては日本の美容室事情の裏側が関係しています。
美容大国韓国 以前は?
最近でこそ美容大国となった韓国
しかし20年以上前は今ほど髪型に対しての関心は決して高くはなかった。
髪は長いか短いかであまり複雑なデザインは少なく
カラーは明るいか暗いかで色ははっきりとした色が多い。
そういった単純なオーダーで作られる髪型がほとんどでした。
そもそも当時の韓国には日本でいう美容室というものがあまり無く
髪を切るのは男女問わず日本で言う理髪店っていうのが多かった。
しかし、日韓国交正常化の流れもあり日本の文化(アニメや音楽やドラマ映画等) が一気に韓国内で広がりました。
その影響もあり美容に対する価値観も一気に変わっていった。
元々韓国での美容師というものは、ネイリストやスタイリスト(洋服)やメイクやエステ等全部含めて美容師と言われていて、日本の様に美容室で髪を切る人が美容師という認識ではありません。
日本の様な美容室が出来たのはわりと最近の事なんですね。
つまり、今韓国で活躍している美容師さんの多くは元理容師さんという事が多く
技術も床屋さんとしての技術がベースとなっているので日本の美容室で行なわれているような技術を使う人はあまり多くはなかったんです。
ですので
刈り上げ等は得意でも日本やヨーロッパの美容師の様な立体的なカットや削ぎは苦手
その為で見た目をかわいく見せる為にスタイリングをしっかり行う必要があり
それによりアイロンを使うのが上手くなっていった。
ここでちょっと思い出して頂きたいのですが
それこそ「冬ソナ」が流行った時期、韓国の俳優さんの髪型って
こんな感じ
顔とかを抜かしてあくまで髪型だけで見ると
・・・なんと言うか普通ですよね。
そういった時代だったんです。
この様に現在の韓国の美容師さんは元々床屋さんが多く技術も床屋さんが使う技術が得意。
刈り上げ ワンレン パーマ ブリーチ 等は得意だけど
レイヤー シャギー 削ぎ 自然なカラー 等はあまり得意とは言えない。
そしてこれも以前ブログで書きましたが
「流行」というのは「多数に都合がいいもの」程流行しやすい
つまり 流行の韓国ヘアとは単純に可愛いとは別にその時の韓国の美容師さんにとって
「最も作りやすい」スタイルだったと言えるんです。
結構前に何年か韓国に住んでいた方が仰ってましたが
「どこにいっても何をオーダーしても毎回同じ髪型にされてしまうんですよね~。」
今はもうさすがにそんな事は無いと思いますが
もしかしたらその髪型は当時の流行でありそれ以外のスタイルは苦手だったからなのかもしれない。
もちろん違う原因もあるのでしょうが一つの大きな原因として
今のアイロンありきの韓国ヘアがあるのは、カットがまだ未熟だった時にスタイリング技術でカバーするという韓国の美容室事情が影響していたのは事実です。
原因は短期デビュー化
さて そんな背景がある韓国ヘアがなぜ今日本で流行るのか
単純に韓国ブームという事もあるのですが今の日本の美容室の内情が大きく関係しています。
その原因が 「短期デビュー化」
ご存じの方も多いかと思いますが美容室で働く際に専門学校を卒業したらすぐにお客様の髪を切れるようになるわけではありません。
専門学校で習う技術はほんの一部
あとは働きながら覚えていく事がほとんど
その期間を一般的にアシスタント期間と言います。
そして働きながら技術を覚えていって晴れて髪を切れるスタイリストとしてデビューするのですがその期間が近年とても短くなっていいます。
ひと昔前まで3年は普通
かかると5年以上もデビューまでに時間を要していたのですが
最近では長くても2年
短いと1年や半年でデビューさせる短期デビューのサロンが増えています。
修業期間とも言えるアシスタントの期間なんて短いに越したことはないので良い事ではあるのですがその分どこかがおろそかになってしまう事も事実
特に「その時に流行っているスタイル以外」は後回しにしないと
1年で全部を覚えるなんて到底できません。
つまり短期間でスタイリストとしてデビューするには
ある程度技術の簡略化が必要となってくるという事なんです 。
「簡略化」された技術は多く使う技術のみ覚えてあまり使わない技術は覚えない
それにより得意と苦手が顕著にでてしまい引き出しが少なくなってしまいます。
だから、出来るだけ少ない引き出しでも切れるスタイルを作る必要がある。
ここまで読んで頂けると大体理解して頂けますよね?
スタイリングに手間はかかるけどシンプルなカットで作れる韓国ヘアは、今の日本の短期デビューの美容師にとってとても都合の良いスタイルであると言えるんです。
例えば通常のヘアスタイルでは
カットが80% スタイリングが20% で作られているとするなら
韓国ヘアは カット50% スタイリング50% で作る事ができる。
極端な話、カットがいまいちでもスタイリングが上手ければぱっと見良いスタイルを作れてしまうんです。
以前テレビで入社したての新人美容師さんの密着がされていました。
その時は入社してたった1週間でカラーモデル(練習台の人)を染めるというもの。
しかし結局カウンセリングの段階でつまづき上手く説明できなくなってしまい
最終的には先輩にカウンセリングを変わってもらう状態。
そりゃあ当たり前です。
1週間ではどれだけ努力家でもほぼただの素人
自分自身が理解できていないのに人に説明なんて出来るわけがありません。
ともかくなんとか綺麗に染めあがり
相手が高校生という事もあったので年が近く会話も終始盛り上がった。
モデルのこも喜び結果オーライでコーナーは終わり。
一見頑張ってる若者の良い話の様に見えますが個人的にはちょっと疑問。
これって結局なんの為になったのかな?
この新人さんの得られたものってカラー1回分の経験値と
なんとなくでも綺麗に染められたという結果。
最近では以前より格段にカラー剤の性能が上がっているので条件次第ではありますが
誰でも簡単に綺麗に染める事が出来るようになっています。
残酷な言い方をすると
今回綺麗に染まったのはこのこの努力では無くカラー剤の性能のおかげ。
それを自分の力だと勘違いしてしまったら危険だし
なんとなくで出来てしまう技術程怖いものはありません。
むしろ失敗した方がまだ学べる点が多かったのかも・・・。
話はそれましたが
こういった「短期デビュー」の為の取り組みが技術の簡略化を招いている原因でもあるんです。
流行と技術は必ずしも比例しない
韓国ヘアが流行った理由の一つとして
日本の美容室業界の過剰な短期デビューが関係している。
短期間で習得出来る少ない引き出しでは単純なカットと丁寧なスタイリングで作る韓国ヘアはとても都合がいい。
それ以外にも
しっかりとブリーチしてから濃い色で染める原色系のカラーは手間こそかかるけど技術はさほどいらない。
作業的にはセルフで出来るくらいシンプルなもの。
ただ細かいコントロールをしたりダメージを考慮すると一気に難易度があがるのですが
単純に仕上がりのはっきりとした色だけを求めるのであれば
時間はかかるけど難しくはない原色系のカラーは 新人美容師にとってある意味とても都合の良いメニューと言えるんです。
つらつらと長編で書いてきましたが
結局何が言いたいかというと
韓国ヘアを作るのは意外に簡単ですよ。とかいう単純な話では無く
美容室を選ぶ際に例えカットだけだとしてもそこのお店の内容をよく理解してからの方がいいという事。
今回の韓国ヘアの様にスタイリングありきで作るカットと
スタイリングをあまりしない前提で作るカットは全く別物。
必ずコテやアイロンで仕上げている美容師さんに
「乾かすだけでまとまる形にして下さい」
というオーダーはそもそもその人のコンセプトとずれている可能性があり
その場合思った感じにならないのは当然と言える。
たとえ仕上げの時に丁寧にアイロンを使いながら
「ここをこうやって こんな感じで スタイリング剤は・・・」
なんて細かく説明されても
「そんなこと自分じゃ出来ないよ」
で終わってしまいます。
逆に毎日アイロンで仕上げる方はこういった説明してくれるのはありがたいですよね。
この様にお客様の普段のスタイリング次第で求めるスタイルも変わるんです。
今回はたまたま韓国ヘアを題材にしてみましたがどういったスタイルでも同じ事が言えます。
美容師は人間なので得意不得意も必ずあります。
場合によっては希望のスタイルはその人にとっては 出来ない(やったことが無い)という可能性すらあります。
単純に若いからとかベテランだからだけでなくその人はどういった技術で何を重視してスタイルを作っているのかを見極めてから選ぶべき。
ゴリゴリのブリーチ推しのサロンでナチュラルなスタイルを求めるは無理があるように
自分の求めるスタイルを提供している店なのか人なのか
一つの基準として韓国ヘアのようなアイロンありきのスタイルは
そこを判断するわかりやすい目安になるのではと思います。
美容室選びの参考にしてみてください。
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