繰り返すほど色持ちが悪くなるカラー
毎回同じように染めているカラーでも実は
”繰り返すほど色持ちが悪くなるカラー”と
”繰り返すほど色持ちが良くなるカラー”があります。
今回はその違いを解説します。
カラーは脱色と発色の同時進行
カラー剤が出来る効果は2つ
1つは髪の中のメラニン色素を分解して色を明るくするブリーチ(脱色)効果
2つ目は髪の中で色素がくっついて大きくなり発色する染毛効果
ヘアカラーはこの二つを同時に出来てしまう優れものです。
でも同時に行われているせいで実際にどれぐらい脱色されてどれぐらい発色されているのかが全くわからなくなってしまいます。
こんな経験がある方はいますか?
ブリーチは傷むから一回もしたことないのに初めて行った美容室で
「以前ブリーチされました?」と聞かれた事。
本人に自覚はないと思いますが脱色効果の高いヘアカラーを何回かしていると
ほとんどブリーチしているのと変わらない状況になってしまうんです。
言い換えると、普通のヘアカラーでもやり方次第でブリーチと同じくらいダメージを負った状態になるという事。
傷ませたくないからブリーチをしていなかった方は残念ですよね。
でもなぜそんな状態なる前に止められないのか。
それがさっきの”脱色と発色を同時にしている”事が原因
脱色と発色が同時に行われている為、実際に今の髪のメラニン色素がどれぐらい残っていてどんな状態になっているかがわからなくなってしまうからです。
例えば仕上がりの明るさは同じように見えるカラーでも、こちらのAとBの様に実際に髪に起きている事は違います。
この様にAのカラーとBのカラーを比べてみると
両方とも染まり上がりは同じ7トーンくらいの明るさになります。
しかし、残りのメラニン色素の量に差があり、カラーして時間がたつと染料は自然に抜けて髪の元々ある色素であるメラニン色素だけが残るので
退色した後の髪の明るさが、Aは9トーンくらいですが、Bは11トーンくらいまで明るくなってしまいます。
これだけでもBの方は色持ちが悪いといえます。
しかし問題はその後
すでに一度染めてメラニン色素が減っている部分。ここをどう染めるかでその後の状態が大きく変わっていきます。
メラニン色素を減らさないで染める
カラーをして何カ月かたつと根元は地毛が伸びてきて黒く毛先は明るい状態になります。
この状態から2回目のカラーをする時
根元はまた同じように染めるのですが、一度カラーした髪は染料だけが抜けてメラニンだけが残った状態になります。
そのメラニンが減っている状態の箇所を根元を染めた様に染めるとさらに残りのメラニンが減少してしまうのでもっと色持ちが悪くなり、退色後に更に明るくなります。
この様に、2回目に染めた方が1回染めた状態よりもメラニンの残量が少なくなっているのがわかります。
これを繰り返していくうちにどんどん残りのメラニンが無くなっていきどんどん明るくなってくので
こういったカラーを3~5回くらい繰り返しているとブリーチをしたのとほとんど同じような状態になってしまいます。
こうならない方法は簡単
最初に説明したようにカラーは脱色と染毛の二つを同時に行っています。
その片方、脱色機能だけ無くしてしまえばメラニンを減らさずに染める事が可能になります。
このように染料だけを入れる様にしていけば何回染めてもメラニン色素が減ることがないので、結果色持ちが悪くならない。
この方法を一部ではノンブリーチカラーと呼ばれています。
言うのは簡単ですが、実はこの方法には問題が沢山あります。
カラー剤の脱色力を落とす方法は大まかに2つあり
1つ目はアルカリを減らす事
2つ目は過酸化水素を減らす事
基本的にはこの2つを調整することで脱色力を落とすことが出来るのです。
ですが、この2つを減力させると脱色力だけでなく発色力も弱くなったりするので、場合によっては染まりが悪くなってしまったり
脱色力の無い状態で染料がどれぐらい色が入るかの予想が立てづらくなるので、上手くコントロールしないと逆に染まりすぎてしまう事もあるし
目に見える色は染料なのかメラニン色素なのか判別が出来ないので正確に今どれくらいの染料があるかわからず染まりすぎたりもする。
つまり、減力された薬剤を使用するとコントロールが難しくなり失敗のリスクが高くなる。
更に、最近では透明感の強い高彩度のカラーや透明感のあるカラーが人気なので、こういった種類のカラーは脱色力を落としてしまうと色がはっきりと出にくくなるので、薬剤の力をあまり落とさずに使用しているサロンが多い。
よくこういったカラーが色持ちが悪いと言われていますが、実際は繰り返す程色持ちが悪くなる様にあえて染めてしまっているからで、そういった意味では色持ち悪くて当然と言えます。
この様に出来るだけメラニン色素の残量を減らさないようにアルカリや過酸化水素を減らして染める事は、それだけ綺麗に染まりにくく失敗のリスクを高める事になります。
カラーの難易度は伝わらない
髪は人によって千差万別で同じ髪はあり得ない。
それに加えて今までどんなカラーを何回してきているのか、パーマや矯正をしているのかとか、最近ではストパーもどきのトリートメントもあったりするので、髪の長さによっては4年分くらいの詳しい履歴が無いと実際に今の髪の状態なんてわかりません。
例えそれがわかったとしても、家でのケアの仕方やスタイリングの仕方。
使っている道具や頻度等
そんな事が影響してくる髪を完全に把握してコントロールするなんてほぼ不可能です。
だからほとんどの美容師は色持ちが悪くなってでも出来るだけ簡単で失敗の少ない方を選ぶ。
結果
アルカリや過酸化水素の濃度を落とさないで、最初に染めた時と同じようにメラニンをしっかり脱色してその上で発色させるそのままの染め方が一番無難になってしまう。
例えばこんな状態の方がいたとします
こちらの写真はどこかから拝借した写真ですが
写真を見た感じおそらく以前自分で黒染めをしていてその後ブリーチしたのでしょう。
黒染めしていない根元の方だけ明るくなってしまい、毛先の一部は時間がたって黒染めが抜けていたのか部分的にすこし明るくなっています。
これをさっきの図に当てはめるとこんな感じになります。
この様に中間部分にのみ以前の黒染めの染料が残ってしまっていると予想できる。
こういった状態を一番ダメージを抑えて色持ち良く染めるとしたら理想はこんな感じ
中間は触れずにそのままにして、明るいところにだけ合わせて染料をいれる。
こうすれば残りのメラニンを減らす事なくダメージも最小限で染める事が出来ます。
でも実際は、以前黒染めしたであろう部分も自分でやっているので境目が曖昧だし
毛先の抜け具合なんかもまちまちで塗り分けるのはかなり難しい
しかも写真の感じだと毛先には矯正をかけたような跡も見れるので、はっきり言ってこのやり方で綺麗に染めるのはほとんど不可能に近い。
でも、もしも塗り分けをせずに普通に染めてしまったらこんな感じになってしまう可能性があります。
この様に中間部分が更に暗くなってしまい、全体の明るさが均等にならない。
この状態をお客様が見たら間違くなくがっかりしてしまいます。
ではこういった状態の髪を綺麗に染めるにはどうすればいいのか。
それは
”ブリーチでとことん明るくしてから白髪染めなどで濃い色を入れてしまえばいい”
そうすればほぼ間違いなく均等に綺麗に染める事ができます。
(髪はボロボロになりますが)
察しの良い方は気づきますよね。
これって先程紹介していた”色持ちが悪くなるカラー”と全く同じ発想のやり方。
ヘアカラーとは
どんな髪でも、どんな状態でも
しっかりと脱色してしっかりと色を入れてしまえば
誰でも簡単にそして綺麗に染める事ができてしまうんです。
これが色持ちが悪くなるのをわかっていても
アルカリや過酸化水素の濃度を落とさずに染め続けてしまう理由です。
カラーはやり方で2通りに分かれる
今までの事をわかりやすく言うと
Aのカラーは
「色持ちも良くダメージも少ないけど扱いが難しく手間がかかるわりに綺麗に染めるのが難しいカラー」
Bのカラーは
「色持ちも悪くダメージが大きいけど扱いが簡単で手間もかからず綺麗に染めあがる可能性の高いカラー」
といった感じに分けられます。
そしてこの二択はお客様は全くわからないので
現場の美容師が勝手にこの二択から選ぶのですが
美容師サイドからしてみれば
へたにAのカラーをして失敗して怒られるくらいならBでやった方が無難だし
サロンによっては時間制限が決められていたり、やり直しになると罰金が発生する事もあります。
ただでさえ次の予約が入っているとあまり時間がかけられないし
同時に何人か担当しているとそこだけに手間をかけられない
良くないとわかっていてもBのカラーを選択せざるを得ない状況に置かれている場合もある。
お客様サイドからしてもカラー直後にはそのダメージはわからないので、簡単で仕上がりの色の綺麗に見えるBのカラーの方が良いと感じてしまう。
そして、その後何年かしてやっと髪が傷んでいる事に気づいてもほとんどの場合は
「年齢で髪が弱くなったのかな?」
「トリートメントを高いのにしてないからかな?」
「パーマと同時にやったからかな?」
と思ってしまい、まさかずっとやってきたカラーが原因だったとは思わない。
こうなってくると現場の美容師がでAとBのどっちを選びたくなるかは明らかですよね。
わかりやすい例で
同じイルミナカラーを扱っているサロンでも店によっては値段が倍くらい違ったりします。
同じイルミナカラーなのになんでこんなに値段が違うんだろうと疑問に思う方もいるかと思いますが
もしかしたらそれは
さっきのAのカラーとBのカラーの様に
同じカラー剤を使っていてもやり方が全く異なるものなのかもしれません。
AとBの違いは薬剤の調合の仕方なので見分けるのはとても困難です。
ただ、少なくてもカラーの値段を4000円以下にしようとすると、どこかで必ずコストを大幅に削減しなければならなくなります。
残留除去はもちろんしてないでしょうし、時間的なコストも削減しなければならないのでカラーのやり方としても簡単なBになっている場合が多いと言えます。
しかし、個人的な意見でBのカラーはただ美容師が塗っているだけで実際やっている事はホームカラーと変わらなく、ガソリンスタンドのセルフサービスぐらいの違いでしかない。
ですので
Aのカラーのみが美容室でする本当のカラーだと思っています。
そもそもAのカラーならば、それが原因で極端に色持ちが悪くなる事なんてあり得ないからです。
色持ちを良くするにはカラー剤の良し悪しではなく
色持ちの良いカラーのやり方をしているかが重要と言えます。
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